AIを使い始めた頃の話をする。
Claude CodeやChatGPTを触り始めて、最初に感じたのは底知れない万能感だった。ターミナルに指示を出せばコードが動く。プロンプトを書けば企画書が出てくる。自分がエンジニアでなくても、ソフトウェアを作れる時代が来たのだと実感した。
そこで自然とこう考えた。「このツールを使えば何か稼げるものが作れるはずだ。何を作ればいいかもAIに聞けばいい」と。
実際に聞いてみた。何度も、何通りも。
返ってくる答えはいつも立派だった。Micro SaaSを作れ。自動化テンプレートを売れ。Chrome拡張を量産しろ。成功事例の数字、市場規模の予測、参入障壁の分析。完璧な企画書のような回答がいくつも生成された。
でも、どれを読んでも動けなかった。「なるほど」とは思う。でも「よし、これをやろう」にはならない。何かが足りない。その違和感だけが残った。
違和感の正体
しばらくして、その違和感の正体がわかった。
AIが出してくる案は、全部「すでに誰かがやったこと」の整理でしかなかった。ネットに転がっている成功事例を集めて、カテゴリ分けして、もっともらしい根拠をつけて返しているだけ。自分の状況、自分のスキル、自分が接している顧客のことなんて何も知らない。知りようがない。
当たり前の話なのだが、万能感に浮かれていた当時の自分にはそれが見えていなかった。
海外ソロファウンダーたちの共通点
興味深かったのは、海外で実際に大きな成果を出しているソロファウンダーたちの共通点だ。
調べてみると、彼らは誰もAIに「何を作ればいいか」とは聞いていない。全員、自分自身の日常の中にあった不満や課題から出発している。ある人はノマド生活をしていて都市の比較サイトがないことに不満を感じ、スプレッドシートを公開した。別の人はAI生成写真の品質に不満を感じて、自分で改善ツールを作った。どちらも最初のバージョンはお世辞にも完成度が高いとは言えなかったらしい。でも、お金を払う人がいた。そこから改良を重ねた。
つまり「AIでアイデアを考えた」のではなく、「自分の不満をAIで高速に形にした」ということだ。順番が真逆だった。
自分に当てはめてみた
この気づきを自分に当てはめてみた。
自分はフリーランスとしてSMB向けの自動化導入やコンサルティングをやっている。目の前に、業務で困っている中小企業のクライアントがいる。飲食店、建設会社、美容室。彼らは毎日、何かしらの作業に時間を取られて苦しんでいる。
その「何か」が何なのか、AIは知らない。でも、自分は聞ける。直接、LINEで、あるいは現場で。
聞いて返ってきた課題を、Claude Codeで最速でプロトタイプにする。これが「AIを活用して稼ぐ」の正しい形だったのだと、今は理解している。
武器だけでは戦えない
よく「Claude Codeを使いこなせば一人で何でもできる」という話を見かける。技術的にはその通りだ。Claude Codeの生産性は凄まじい。以前なら外注して数十万円かかっていたものが、自分のターミナルで数日で完成する。
ただ、それは「何を作るか」が決まっている場合の話であって、「何を作るか」自体はAIからは出てこない。
武器としてのAIは間違いなく最強クラスだ。でも、武器だけでは戦えない。敵——つまり解くべき課題——が必要だ。
その課題は、スクリーンの向こう側ではなく、自分の半径5メートル以内にある。少なくとも自分の場合はそうだった。クライアントと話す中で、「毎月この作業に3時間かかってるんだよね」と言われた瞬間に、それをClaude Codeで30分に圧縮する仕組みが頭の中で組み上がった。
AIに聞くべきことと、人に聞くべきこと。この切り分けができた時に、ようやくAIが本当の意味で武器になった。
これからAIを活用して何かを始めようとしている人に伝えたいのは、一つだけ。
「何を作ればいいですか」とAIに聞く前に、目の前の人に「何に困ってますか」と聞いてみてほしい。その答えの中に、AIで解くべき課題がある。
