親がくじ引きで地区の常会長になった。
「今年はうちの番だから」と聞いた時は、正直大変さを甘く見ていた。町内会の役員みたいなものだろう、くらいに思っていた。
テーブルいっぱいの紙の山
4月分の市報や案内が届いた日、現実を知った。
テーブルいっぱいに広がる紙の山。市報、公民館だより、健康診断の案内、ゴミ出しカレンダーの変更。10種類近い紙を、班ごとに世帯数を数えて仕分けして、封筒にまとめて、配り先を記入する。
家族総出で2時間かかった。これが毎月ある。
10種類の紙 × 班ごとの世帯数を仕分け → 封筒にまとめて配り先を記入。家族総出で毎月2時間。これが1年間続く。
デジタルの出番がなかった
普段はAIを使って飲食店のシフト管理を自動化したり、会社のExcel業務を効率化したりしている。でもこの仕分け作業にはデジタルの出番がなかった。
紙を数えて束にする物理的な作業。各家庭のポストに配りに行く作業。どちらも人力でしかできない。
技術的には市報のLINE配信は作れる。自分のスキルで十分可能だ。ただ受け取る側にスマホを持たないお年寄りがいる以上、紙を完全になくすことはできない。他の地区では障害者支援の事業所にポスティングを業務委託しているところもあるらしいが、仕分けの手間は残る。
身の回りに残るアナログの構造
この体験で感じたのは、デジタル化が届いていない場所が身の回りにまだたくさんあるということだった。
自治体の配布物だけでなく、地域の集金管理、イベントの連絡網、回覧板の運用。全部紙とアナログで回っている。
くじ引きで当たった家庭が毎月2時間の仕分け作業を1年間やり、翌年は別の家庭が同じ苦労を繰り返す。この構造が何十年も変わっていない。
そしてそこにこそ効率化のニーズがある。毎年誰かが同じ苦労をしている。誰もが「面倒だ」と思いながら、誰もその構造に手を付けていない。
「気づける目」を持てるようになった
今の自分にはこの問題を解決する力はまだ足りない。地域全体のシステムを変えるには、技術だけでなく合意形成や運用設計など、もっと広い力が要る。
ただ「ここが非効率だ」と気づける目は持てるようになった。
AIを使った業務効率化の仕事を続けていく中で、いつかこういった地域の課題にも手を伸ばせる人間になりたいと思っている。飲食店のシフト管理を自動化したように、地域の仕分け作業にも「こうすれば楽になる」と提案できる日が来るかもしれない。
その日のために、今は目の前の仕事で力をつける。テーブルに広がった紙の山を見ながら、そう思った。
