タスク管理ツールを開くのが、いつのまにか面倒になっていた。
Notionにきれいなタスク管理ページを作った。優先度も、期限も、カテゴリも整っている。なのに肝心の「開く」をやらない。気づけば期限切れのタスクが、静かに溜まっていく。ツールが悪いわけじゃない。「わざわざ開く」という一手間が、人間にとっては意外と高い壁なんだと思う。
だから今日は、その壁をなくす仕組みを作った。Notionを開かなくても、毎朝LINEに今日のタスクが届いて、そのLINEに返信するだけで、完了も削除も期限変更もできる。そういう仕組みだ。
朝の通知は「見て終わり」だった
出発点は、毎朝7時にLINEへ届く1通の通知だった。
少し前に、今日の天気とAIニュース、それにひとことの名言をまとめてLINEに送るbotを作っていた。クラウドのスケジューラで動くから、PCを開いていない朝でも勝手に届く。気に入っていた。
そこに「今日のタスク」も混ぜることにした。NotionのタスクDBから、今日締切のぶんと期限切れのぶんを引っ張ってきて、優先度の高い順に並べ、通知の先頭に出す。これで朝、布団の中でその日やることが目に入る。
便利になった——はずだった。でも結局「見て終わり」なんだ。タスクが目に入っても、片づけるにはやっぱりNotionを開かないといけない。通知は一方通行で、こちらが何を思っても画面の向こうには届かない。
通知に「返信」できるようにする
やりたいことは単純だった。届いた通知に「これ終わった」と返したら、Notion側でも終わったことにしてほしい。それだけ。
ところがこれが、技術的には意外と大きな段差だった。LINEは、ユーザーが送ったメッセージを、こちらが指定したURLに転送する形でしか渡してくれない。この“届いたら知らせてくれる仕組み”をWebhook(ウェブフック)と呼ぶ。あとから「さっきのメッセージちょうだい」と取りに行く方法は用意されていない。
つまり返信を受け取るには、いつ来るか分からないメッセージをずっと待ち受ける「窓口」が要る。朝の通知botは1日1回動いて終わりだったから、この“待ち受け”とは相性が悪かった。
「送るだけ」と「受けて動く」は、似ているようで仕組みがまるで違う。前者はタイマーで足りる。後者には窓口がいる。
サーバーを1台も借りずに作る
窓口がいる、と聞くと身構える。24時間動くサーバーを借りて、月額を払って、管理して……。でも今回、サーバーは1台も借りていない。
使ったのはGAS(Google Apps Script)。Googleのアカウントさえあれば、コードを書いてURLとして公開できる無料の仕組みだ。スプレッドシートの自動化でよく使われるやつ、と言えば伝わるだろうか。
このGASに、LINEから返信が届いたときの処理を書いた。送り主が自分かを確認し(自分以外のメッセージは無視する)、文面を読んで、Notionのタスクを更新して、「完了にしました」とLINEに返す。サーバーは呼ばれた瞬間だけ一瞬動いて、あとは眠っている。個人で使うぶんには、料金は実質ゼロだ。
LINEの返信機能を使った返答は、そもそも無料枠の対象外でカウントされない。Notionの操作にも料金はかからない。つまりこの仕組みの維持費は、ほぼ0円。かかったのは作る時間だけだった。
「3 完了」で暮らしが回る
完成した使い方は、拍子抜けするほど短い。
朝、番号つきのタスクがLINEに届く。1番から順に並んでいる。終わったものがあれば「3 完了」と返す。もう要らないものは「2 削除」。今日は無理そうなら「1 明日」と返せば、その場で期限が翌日にずれる。
返すたびに「『○○』を完了にしました」と、タスク名つきで確認が返ってくる。ついでに残っているタスクの最新リストも一緒に届くから、次の番号で迷わない。
気づいたら、Notionを開く回数がゼロになっていた。タスク管理の主戦場が、いつのまにかLINEのトーク画面に移っていた。
削除といっても、Notionのゴミ箱に移るだけで30日は元に戻せる。だから「とりあえず消す」が気軽にできる。完了もチェックを外せば戻る。やり直せると分かっていると、人は迷わず手を動かせるものだ。
これは「自分専用」では終わらない
作りながら、これは自分のためだけの仕組みじゃないな、と思っていた。
「LINEで送ったら、裏側で何かが動いて、返事が来る」。この形は、中小企業の現場にいくらでも応用が効く。レシートの写真を送れば経費表に記録される。「在庫これだけ減った」と送れば台帳が更新される。問い合わせに自動で一次返信する。やっていることの骨格は、今日作ったものと同じだ。
BELLA TECHでやりたいのは、まさにこういう「日々のだるい一手間」を1つずつ消していくことだ。大企業向けの立派なシステムじゃなくていい。目の前の人が「これ地味に面倒で」と言っている作業を、LINEで完結させる。それだけで誰かの1日が、少し軽くなる。
今日の僕の「面倒」は、タスク管理ツールを開くことだった。それを、朝の通知に「3 完了」と返すだけに変えた。たった一手間。でもその一手間が積もって放置を生んでいたのだから、効果は大きい。
開かなくていい。返すだけでいい。仕組みのほうがこちらに歩み寄ってくれると、人は続けられる。
